掃き溜めアラカルト

多分が余分

旅のお供

 高校1年生の夏、生まれて初めてパソコンを買った。

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画質ヤバすぎだろ

 恥ずかしいことに今まで製品名を知らなかったので調べてみると、AcerのTravelmateという機種らしい。CPUは第五世代i5、メモリは4GB、OSに至ってはwindows7 32bitとハッキリ言って性能は良くない。AfterEffectsやpremiere proのようないわゆる重いソフトであれば、使うことはおろか起動することすら叶わないだろう。それでも、僕は自分専用のパソコンが手に入ったことがうれしくて仕方がなかった。

 このパソコンを使って、本当にいろいろなことをした。ネットサーフィンも、レポートの執筆も、パワーポイントの作成も、画像編集も、DTMも、そして動画編集も全部これ一台でやっていた。(今考えると信じられないが)

 また、高校で何か動画を作るとなった際には、わざわざこれを高校まで持っていった。ノートパソコンといえどもかなり大きく、決して持ち運びに便利なものではなかったが、それでもノースフェイスの大きなカバンに無理やり押し込んで持ち歩いていた。高2の春に一人で金沢に行った時も、着替えやカメラと一緒に持って行った。当時の僕にとって、このパソコンは名実ともに"TravelMate"だったのだ。

 しかし、しばらく使っていくうちに不満が出てくる。数ある不満の中で一番はなはだしかったのは、「メモリが足りない」ということである。インターネットブラウザを開いてYouTubeを見るだけでも数GBのメモリを消費する。TravelMateでは、YouTubeを見ることもギリギリだった。これが動画編集となると猶更だ。当時はAviutlというソフトを使っていたのだが、編集をしていると「メモリが足りません」という無機質なエラーコードと共にソフトがフリーズすることが少なくなかった。この現象が何度も起きればたまったもんじゃない。そこで僕は一世一代の決断をした。

「メモリを増設しよう」

とは言っても、どうやってメモリを増設しようか。どんなメモリを選ぼうか。メモリを増設すればあのAeも使えるようになるのだろうか。躍起になって調べていると、とあるガジェット系のウェブサイトにたどり着いた。そこには以下のように書かれていた。

「32bitOSでは、メモリは4GBまでしかサポートされていません」

 

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 時は移ろい、2020年3月7日。この日、私は新しいパソコンを買うことになった。それはMSI製のゲーミングデスクトップで、CPUは第八世代i7、GPUはGTX1070。そしてOSはWindows10 64bit。ハイエンドとは言いがたいが、それでもたいていのことを難なくこなせるくらいの性能はある。当然64bitなのでメモリの増設だってすることができる。実際6月にはメモリを増設し、メモリは合計で32GBとなった。そのおかげか、今のところは動画編集などといった負荷の強い作業も殆どストレスなくおこなうことができている。

 これを買ってから、TravelMateの出番はめっきり少なくなった。それもそのはず。新しいパソコンとの性能差を考えると、新しいパソコンを使わない理由はない。それに、特段それを使わなければいけない場面も今のところはない。 更には、windows10にアップグレードしたところ、タッチパッドの部分が全く反応しなくなってしまった。*1

 しかしながら、折角持っているのに使わないのはもったいないという義務感からなのか、それが醸し出すある種のノスタルジーに誘われてのことなのかはわからないが、時々意味もなくTravelMateを使いたくなる時がある。ともすれば、それを使ってブラウザを開いたり、レポートを書いたりする。決して大層なことはしないし、その中でもソフトがフリーズしたり再生中の動画が進まなくなったりすることがある。それでも不思議なことに、こうすることでなんとも言えない幸福感を覚えるのである。その幸福感の理由をたどると、もしかしたらさっき言った「ある種のノスタルジー」に行きつくのかもしれない。そうなると、TravelMateは、僕を過去の楽しかった日々への「旅」に誘う僕の”TravelMate"ということになるだろう。

 TravelMate P257M----それは今も昔も変わらず、僕にとっての" TravelMate"なのだ。

 

*1:解決策を知っている人は教えてください